魚道の種類

魚道には様々な種類があります。大まかな体系とその形式、機能を整理しました。



魚道の基本構造による分類

魚道の種類

1 プールタイプ

 A 階段式

 B バーチカルスロット式

 C 潜孔式

2 ストリームタイプ

 A デニール式

 B 粗石付き斜曲面式

 C 導流壁式

魚道内を自然流下で流す形式には大きく2つに分けられます。

〇 プールタイプ

 魚道内を多数の隔壁で仕切って、その間に低流速の湛水域(プール)を設けた形式です。

さらにプールタイプにおいても様々種類があるが大きく3種類が挙げられます。

1・階段式・・・隔壁を越流する流れによって各プールが連なる形

2・バーチカルスロット式・・・隔壁に設けられた鉛直の隙間(バーチカルスロット)を抜ける流れによって各プールが繋がる形

3・潜孔式・・・隔壁に設けられた穴(潜孔)を抜ける流れのみによって連なる形 

1・階段式

魚道の種類 階段式・全面越流型
階段式・全面越流型
魚道の種類 階段式・アイスハーパー型
階段式・アイスハーパー型
魚道の種類 階段式・ノルウェー型
階段式・ノルウェー型

引用

中村俊六.魚のすみよい河づくり 魚道のはなし 魚道設計の為のガイドライン.1995.7.25.p183

2・バーチカルスロット式

魚道の種類 バーチカルスロット式
バーチカルスロット式

引用

中村俊六.魚のすみよい河づくり 魚道のはなし 魚道設計の為のガイドライン.1995.7.25.p183

3・潜孔式

魚道の種類 潜孔式
潜孔式

引用

中村俊六.魚のすみよい河づくり 魚道のはなし 魚道設計の為のガイドライン.1995.7.25.p183




〇 ストリームタイプ

 魚道水路内に様々な流速を生み出す用紙したタイプです。流速の変化を生み出すために、突起物や阻流板と呼ばれる板などを用います。

ストリーム式も様々な形状があります。

1・デニール式・・・阻流板を水路内に設置して流速に変化をもたらす形。

2・粗石付き斜路式・・・突起として玉石を用いる形。

3・導流壁式・・・流れに沿った勾配を緩くするために水路内に導流壁を設けた形。

1・デニール式

魚道の種類 デニール式・デニール型
デニール式・デニール型
魚道の種類 デニール式 スティープパス型
デニール式・スティープパス型
魚道の種類 デニール式・舟通し型
デニール式・舟通し型

引用

中村俊六.魚のすみよい河づくり 魚道のはなし 魚道設計の為のガイドライン.1995.7.25.p184

2・粗石付き斜曲面式

魚道の種類 粗石付き斜曲面式
粗石付き斜曲面式

引用

中村俊六.魚のすみよい河づくり 魚道のはなし 魚道設計の為のガイドライン.1995.7.25.p184

3・導流壁式

魚道の種類 導流壁式
導流壁式

引用

中村俊六.魚のすみよい河づくり 魚道のはなし 魚道設計の為のガイドライン.1995.7.25.p184




〇 ご覧いただいた様に、様々な形式の魚道が開発されてきました。

 そして、これらの魚道には全て共通の構造があります。それは「祖石付き斜局面式魚道」を除き、そのほとんどの魚道構造が、河川に設けられた堰堤などの段差部から下流方向に突出した形状で、左右に間隔を空けて2枚の側壁を設けた構造は各種魚道の共通事項で、その左右2枚の側壁の中に研究者が開発した各種形状のプール壁が設けられている構造となっています。

 わかり易く説明すると、3面張りコンクリート水路の中に各種形状をした魚道用のプール壁が設けてあるということです(図-1)

   

 

 

                                         図-1:3面張りコンクリート水路構造

                                            が突出型魚道の共通構造

 

〇 従来の魚道が抱える共通の課題とは。

 このような魚道形式を総称して「突出型魚道」と表現していますが、突出型魚道の共通した課題となっている原因としては、全体構造が「3面張りコンクリート水路」状態となっていいるため、下流端の魚道入口に到達できずに通り過ぎた魚類が、魚道の途中の側面から魚道内へ進入することが出来ないことです。 海から水の流れに向かう対向性という習性により遡上してきた魚類は、段差部に設けられた突出型魚道の先端にある狭い上り口の位置を確認することはできません。ただひたすら上って来て、この狭い「上り口」に偶然到達した魚だけは堰堤などの段差を乗り越えて上流部へ遡上することができますが、  

上り口に到達しなかった魚類は上り口を通り過ぎて進み、堰堤の段差部の壁にぶつかってしまうことになります。魚類は堰堤直下で左右に方向を変えながら遡上できる場所を探しますが、魚道構造が3面張りコンクリート水路状態ですので、左右の側壁が障害物となって魚道内へ入ることができません。そのため、堰堤直下の水叩き部に真っ黒に滞留して、段差部から流れてくる流れに向かって飛び跳ねる姿が多く見られるのは、魚道の下流先端だけにしか設けられていない「上り口」の位置と構造、及び魚道側面からは魚道内へ入ることが出来ない3面張りコンクリート水路型の魚道全体構造が、従来の突出型魚道の課題の原因となっています。

 

〇 従来の突出型魚道の共通の課題の解決方法

 先端に狭い上り口がある突出型魚道とは違い、棚田式魚道は魚道の全体形状を扇形とし、段差部から下流方向へ180°の扇状に広げる構造とした。この形状により「上り口」が大きく広がることとなりました。

 河川幅全体の横断構造物となっている堰堤に「棚田式魚道」が設置してある場合、魚道を設置してある場所とは違う場所で堰堤の段差部に突き当たった魚類も、左右の横断方向に移動しながら上り口を探すため、棚田式魚道の180°の上り口の側面に到達することが出来ます。これにより魚道のどこからも魚道内へ進入することが出来ることとなりました。この魚道側面からも上れる魚道構造の効果を天然アユを対象として行った調査によると、魚道左右の側面から上る遡上経路を上ったアユは全体の3分に2以上となりました。        写真-1:90°タイプの棚田式魚道

また、既に突出型魚道が設けてある場合は、突出型魚道の左右に90°タイプの棚田式魚道を補助的に設けることで、魚道の全体形状を扇形とする方法もあります(写真-1)。こちらも、設置後は遡上する魚類の数も種類も大幅に増加しています。

 

〇 もうひとつの課題:砂防ダムなど高低差が大きな個所に設置する魚道が無かった

  通常の河川の段差部は0.5m~2.0m程度となりますが、砂防ダムなどでは高低差が10m以上になる場合もあります。このような場合、今までは、高低差が低い箇所に設置する魚道ブロックをスイッチバック式に何度も折り返して高度を上げて設置されました。しかし、コンクリートブロック製品は重量が重いため、施工も大変でしたが荷重が何層にも掛かるため限度がありました。

  そこで開発されたのが「たて型壁面魚道」(写真-2)です。

 左右の折り返し部2種類と掛樋部と合わせて3種類のパーツを、ダム壁面に直接アンカーで取り付ける施工方法です。パーツごとに独立しているため、下層のパーツに荷重が掛かりません。従って、様々なダムの高さに応じてダムの壁面に魚道を設置することが可能となりました。

 

棚田式魚道を併設する

たて型壁面魚道の魚道幅は60㎝です。魚類がこの魚道の下流端に設ける「上り口」に到達しにくいため、下流端に「棚田式魚道」を設置して(写真-2)上り口を90°又は180°にすることができます。

                                        

                                          写真-2:たて型壁面魚道と棚田式魚道